Story

第八話

『ヒーローの誕生』~ダルライザー遭遇編プロローグ~

小学校の放課後、街の芸術推進の一環で1ヶ月間の演劇の課外授業を行っている
男はその特別講師
自身が役者を目指し学んでいたが年齢と将来を考え夢を諦め帰郷
未だ夢に対しての未練も多く、こういう機会が本人にとっての休息だった

男『よし!じゃあ今日はおしまいだ!次は明後日ね!』

子供達『は~い!さようなら~!』

『はい、さようなら!』

電話が鳴る

男『もしもし?あ、はい!了解です!じゃあ取材に伺います!明日の19時で!』
男は役者を目指していた時に買ってくれていた映画監督の影響を受け、見よう見まねで始めた映像編集が副業だった
この電話はその依頼
今回は結婚式でプロフィール映像を作ると言うものだった

男『あ!そう言えば!』

男は自転車でレンタルビデオ店に向かった
大の映画好きで洋画ばかり見ている

男『良かった!あった!』

店員『ヒーローイントゥーザ・ダーク一本でお間違いないですか?』

男『はい!』

店員『一泊…』

男『二泊で!!』

店員『あ、はい。』

家業は老舗のレストラン
ご飯時じゃないと人があまり入らないが、それで何とかやれている
昼と夜はその手伝いをし、夕方は演劇を教えている
仕事を終えた後は映画を見る日



『この腐敗した街を何とかしなければ!俺の心を闇に染め、悪人どもを恐怖で支配する!…そうだ、こんな感じだ!街を変えるにはインパクトが必要だ!…』



翌日
昼の一仕事を終え、依頼を受けた場所へ向かう
そこには若い男女が座っている

男『じゃあ、お二人のプロフィール映像作成のために、ちょっと色々お伺いしますね!』

若い男『はい』

若い女『…』

ある程度のデータは事前のアンケートで聞かれた状態だが、出生日や勤め先以外はほとんど空白だった

男『小さな頃の夢とかありました?』

若い男『うーん?…特にないっすね。』

男『何でも良いですよ!野球やってるみたいですが、野球選手とか?』

若い男『ああ、でもなれないっしょ。やってただけだし』

若い女『何これ?こんなにメンドイの?』

男『まぁ紹介なので、こちらが考えるにしても何もないと全然わからないので…』

若い女『はぁ?なに?だから面白くしたいって言ってんじゃん?出来ないの?』

男『…彼女さんは?…夢とか?』

若い女『ない』

男『じゃあ学校の思い出とかでも良いので?…ほら、修学旅行で何か楽しかったとか?』

若い女『んじゃ修学旅行』

男『…はは』

若い女『なに?何なの?んじゃ~強いて言えば友達いじめてた!いい?』

男『いや、それは書けないですよ…』

イライラした新婦がタバコに火をつける

男『お腹にお子さんいるでしょう?やめた方が良いですよ』

若い女『関係ないでしょ!』


色々と難航したがとりあえず作品は完成
この二人の依頼は無事終えた
その後のシラカワ商工会議所青年部の集まり
今日の議題は市のキャラクターを作ると言うこと
男は小さいながらも経営者の息子
青年部は皆、自身が経営者や経営者の息子の集まりだ

そこでは色々なアイディアが出された
ほとんどがかつて英雄だった武将の名前をもじったキャラかダルマであった
その会議中に青年部唯一の紅一点の放った『ヒーロー』が男は忘れられなかった

その夜眠ろうとしたが眠れなかった

新しい市のキャラクター…
街を変えるにはインパクトが必要だ…
あんたには関係ないでしょ!…
ヒーロー…

男『これだ!』

会議で描かれたものはダルマに手足の生えたいわゆる二頭身キャラ
ずっと映画でヒーローを見てきた男には既に図案が浮かんでいた
あっという間に絵が描きあがる

男『これが七転び八起きを伝えるダルマのヒーローだ!…眠い…』

翌日、青年部に絵を持っていくと誰がやるのか?等の話し合いが行われた
やはり描いた男が演劇の経験もあり適任とされた
今回の会議ではどんな物を作るのかプレゼンをしなくてはならない

男『今考えているものは、皆が捨てたゴミなどが集まって子供を襲い、それを助けると言うのを考えています。』

会員『んじゃとびっきり強そうな悪者作れ!』

男『あ、はい!』

会員『それはプロの業者にお願いするんですか?』

男『いえ、同じような事をしている人達を調べると皆、手作りしてるようです!』

会員『出来んの?』

男『やってみないとわかりませんが、みんな苦労して作ってるみたいなので、楽は出来ません。“子供達喜んでくれるかなぁ”って日記に書いてありましたが、それが大切なんだと思います!』

まだまだ具体的には伝わらなかったが、協力してくれるメンバーは増えつつあった
少しずつ前に進んでいった

男がヒーローを完成させるのに半年
初めてのお披露目の日
それと同時に市内でヒーローの名前公募が始まった

アクティオン
ダルマイザー
テイシンガー
カッセイザー
ダルマン
ダルライザー
レッドファイヤー
…他全部で500通が集まった

男『どれが良いか皆で投票したいと思います!』

投票の結果は僅差だがダルライザーだった

副会長『良いんじゃない?ダルマが起きる。だから英語でライズでしょ?七転び八起きだから』

男『ああ!本当だ!そうですね!』

そこにいた全員のほぼ満場一致で決定した
それからはショーに向けたトレーニングの毎日が始まる

悪役の男『きっついな、そんなにやらなくても大丈夫じゃない?』

男『人前に立つならそれなりの努力をしろと教わりました!その努力の量が多ければ多いほど人は感動するんです!やらなきゃダメです!』


そんな話を地元の新聞やTVも取り上げた
ヒーローショーも少しずつ上演出来るようになり噂は少しずつだったが広まっていった
それは予想しない相手にも知れ渡った…



No.1『ほう、地域活性化のヒーロー?地元も捨てたもんではないな』

No.6『新聞など読んでる場合か !』

No.1『情報は大切だ、世はヒーローが現れる時代か!ハッハッハ!笑える!』