第一話
~プロローグ – 堕ちた天才~
大手メーカー開発部に勤務していた過去を持つ後にダイスNo.1となる人物。
会社にも期待された人材で、入社後8ヶ月で会社の命運を左右する、あるプロジェクトが発表される。だがそれは彼が以前同僚に話していた計画そのものだった。
男『あれは、自分が描いていた画期的な技術です!自分でなければ出来ません!』
上司『いかんよ君、よくいるんだ昇進願望が強く、直接君のように自分から言ってくる人間が。ほら、企画書もきちんと彼がまとめたものだ』
男『そんな、これは私の話した夢そのもの!…』
上司『期待された人間ほど、応えようと言う気持ちはわかる。だが人のものまで取ろうとしちゃいけない。まぁ、また次があるさ。』
事情を話し、自分にリーダーをやらせて欲しいと言ったが、プロジェクトリーダーは同僚に決まり、それが成功し同僚は一気に昇格する。
この訴えがいけなかったのか、上司に直訴したことは瞬く間に社内に広がった。それにより交際していた同じ社内の女性も愛想を尽かし、その同僚と交際が始まったのを知ったのはそんなに日が経たないうちだった。
社会は甘くないと思ったと同時に人間不信に陥り、ひたすらに自分の仕事と次なるアイディアを生もうと必死になった。
今までは華やかな人生であった、スポーツ万能で博学、それら全ては努力の賜物と言うくらい努力家。皆の憧れだった男はたった一つ歯車が外れ、運命は密かに逆転する。
2年も過ぎると会社で聞こえるのは、
『期待していたのに』
『役に立たない』
等の声。唯一の発散の場は地元白河に住む両親との電話だけだった。
『大丈夫だよ、何も心配するな次はうまくいく』
いつもこう言っていた男はある時を境に、
『ダメだ、俺には何も出来ない…どうしたらいい?』
とこぼすようになる。
仕事に悩む息子をほっとけなかった両親は帰郷を促す。悔しい思いもあったが心機一転、家業を継いで頑張ろうと思った。
全てを精算し、家業を継いだ後、待ち受けていたのは社会だった。家は温泉旅館だったがある事件をきっかけに泉質が見直され温泉と名乗れなくなってから客足はめっきり減った。No.2との出会いはここからだった。
同級生であり経営コンサルタントのNo.2。危機に陥っていた温泉を救おうとリサーチに来た。
『久しぶりだな』
男『まさか、お前がそんな職をしてるなんて、噂で聞くくらいだ、さぞ敏腕なんだろ?』
『ああ、任せておけ。と言っても他力本願はいかんぞ、お前が出来ることをしなきゃならない。さて、色々と聞かせてもらおう』
No.1の経歴を生かし、他にはない温泉を作ろうと言うコンセプトで変わった電気サウナやお湯を科学変化させる装置など、投資にはかなりかかったが結果は出た。
以前のように忙しい毎日。客足は戻ったがそれは長く続かなかった。
不景気で自宅生活の楽しみ方や家ご飯を促すマスコミ。自分ではどうにもならない状況だった。経営はだんだん悪化し借金取りが来るようになる。
借金取り『おい!返済はまだか!ああ?まだあと900万残ってるぞ!』
男『すみません!そんなすぐには返せません!少しずつ返しますから!』
借金取り『おら!持ってんだろ?3万か、利息にしかならねぇがこれはもらっとく。』
男『利息?返しても返してもいつもそれじゃないか!!』
借金取り『うるせぇ!!返せねぇ奴が何をほざく!次はいつ返せるんだ?働きに出てんだろ?』
男『…10日待ってください…』
借金取り『10日ぁ?おいおい、そんなにお人好しだと思うなよ。』
おもむろにポケットに手を入れる。
借金取り『あ、良いこと思い付いた!このサイコロで決めるか?あ?…残念ながら10って数字はねぇ!ははははは!!ほら!二だ!二日後に来るからな!』
そんな日々が続くうち両親は心労で倒れてしまう。入院費用もままならず、自己破産の選択しかなかった。No.2はそれを自分のせいだと謝ったがNo.1の口から出た言葉は違うものだった。
男『お前は悪くない、見ろ楽園都市計画、これを一緒にやろう。社会は甘くなかった、ずるくなければ勝てない、コントロールしなければコントロールされる。俺とお前で住みやすい社会を作ろう、その前にいらないものを排除する。俺と同じ苦しみを気分を味わわせてやる。』
淡々と話す男にはかつての覇気はなく、別の執念が燃え上がっていた。計画は凄まじい物だった。
情報経路の改革から人びとの意識コントロール。
社会からの独立と自らの支配。
全てが自分の人生を破壊した者達への復讐。そして社会変革だった。
社会に対し、不満を持っていたNo.2は復讐はともかく、統治による変革には賛同した。
そして計画を遂行するには人手が必要だった。
経営コンサルであるNo.2がその手腕を生かし他に自分達に必要な人材を上げた。
・技術者1名
・化学者1名
・ドライバー
・戦闘技術に長ける者
そして集団名は借金取りが次に来る日を決めていたサイコロを見て、
『フハハハハ!!これだ!これが良い!!今度は俺たちが世の中を回す!!フハハハハ!!』
それを復讐の狼煙としダイスが動き出す。